居心地の悪い六人家族

ここはファミレスだろうか。二脚の長椅子に三人ずつ腰掛けている、奇妙な人たちはおそらく家族か。彼らは順番を待っていた。六人は居心地が悪そうに天井を見つめたり、目をキョロキョロさせたり、口をもごつかせたりして居心地の悪さを噛み砕いている様子だった。誰一人として、会話を試みるものもいなかった。何かを話しそうで話さず、口と目を昆虫の脚のようにバタつかせていた。

わたしがどこにいるのか、わたしには分からなかった。というよりもわたしがどこにいるのかは、どうでもよかった。わたしは長椅子と長椅子の間にある植木鉢の前にいて、六人、時には三人を同時に視野に収められるところにいた。わたしは目であり、身体の部位である目ではなく、わたしは目でしかなかった。苛立つ目だった。

わたしの目が、わたしの視線が、わたしのビームが家族を居心地悪くしていたのかもしれなかったが、目であるわたしが思うに家族はあまりファミレス的な空間に不慣れだったのではないかと考えている。

わたしは、家族のことを陰気な奴らと呼んでいた。何も話さず、堪え忍んでいるような態度が目について、わたしは苛ついていた。もうわたしは既に夢から覚めかけていたこともあって、焦るような気持ちも相まってなお苛ついていた。

どうでも良いテレビ番組の質問が気になって仕方ないというような感覚に近かった。わたしは彼らがどうか話すようにと願った。目が覚めてしまえば、二度と会うことなどないのだから、せめて一声だけでも言葉を発してくれなどと願った。

わたしは非常に人間的な目であった。わたしは目が覚める。どっぷりと身体が疲れている。疲労が粘ついた。目はあんまり開かなかった。家族は何も話さなかった。男か女か、目ん玉が狂ったようにでかい、あいつの目が宙を彷徨い、口が口が口が、あれは何かを話そうとしていたわけではないことをわたしは知っている。