蒼い世界

蒼い世界

夜を凌いだ 河川敷 毛糸の靴下 はぐっしょりぬれた 足の汗 月がきえかける 半顔を浮かべて 薄らぐ笑う霊と化した月 生きれた 眠りから覚めた 世界は蒼かった

蒼い世界

蒼い世界

蒼い世界

死んだ木 死んだ草 生きる木 生きる草 のうえに 霜の華 美しさのあまりに 身体がないた 夜と朝にぶら下がっていたのは おれだけではないか人間は みんな死んでいたのではないか おれだけが 息を吐いて 吸って おれだけが霜のうえをあくがった みんな死んでいた みんないなかった

蒼い世界

蒼い世界

蒼い世界

おれだけが 瞬間の王たる おれだけが 河川敷のうえで 恨めしい月にさようならを告げ おれだけが 緋を 待っていたのでないか おれだけが望んでいたのではないか 夜の完全なる終わりを おれは川の向こうをながめた 来るか来るかと祈った どうせ来る緋を 待った 一秒でもはやく 来るように 来たるものを祈った 待った 緋がきた そらがゆるし色に覆われた おれの身体は泣いた 日の光があたたかくて それが知らない人の顔を 照らしているのだと カーテンの隙間から忍んで 照らしているのだと思うと泪がでた 王は霜とともにきえる