アニメを見ている。主人公が年々、貧弱になっているのは、視聴者層に合わせているためだろう。エヴァのアスカや綾波みたいな女の子に手を引っ張られ、世界の命運をかけて闘う。

この手の話は今や王道となった。時代を反映しすぎている。共感か、したくないな。しても良いが、そんなに誰かと共感したいものだろうか。お前たちの見たいものを見せてやる。結構だ。涙にも色々な涙がある。涙の種類をおれは知っている。人間として生きている我々には、対人間用の涙があり、ピュシスに触れたときに流れる涙がある。なんでもよい、おれの目の前にある広告をすべて見回してみよ。そのうちの、映画広告を見たまえ。そのうちのほとんどは、おまえに人間としての涙を浮かばせる。人間は泣けるように作られている。坂口安吾はそのようなことを言っていた。

共感はいつも肌のうわをなぞる。互いに分かり合えたような顔をして人間が人間になりすます。共感しようもないあなたの話が耳に聞こえる。本当は我々が共感しあえることなどないのだ。手鏡でもしていた方がよっぽど慰めになる。

おれのこの、偉大な屈辱は、なあ、おまえたちの与り知らぬ、永遠に知ることのないところ。おれは車に乗れない。