聖なるかな、我々は

リサイクルショップに勤務してから、日本のお客様大国っぷりをまざまざと見せつけられている。

千円で売った商品に不備があって、五万円分割引させられたり、胸ぐらを掴まれて海行くぞと外に連れ出されたり、商品を転売してクレームがでれば店にブチギレてくる転売ヤーとか。挙げ始めればキリがない

「自然な笑顔とスマイルでお客様をお迎えしましょう」クソみたいな館内放送である。どうして笑えるのか。我々は天使か、神の使いかと毎度ツッコミを入れながら、トイレだけを済ませに来るお客様に開店時刻を伝える。

生活保護なんですが、安くしてもらえないですか?」

「生きてればいいことあるかな?」と怒鳴り散らされた後に聞かれたことがある。「ないんじゃないです、生きてても」と答えたが、ぼくがあるかもしれないですね、と言うまでお客様は質問をやめなかった。

生活保護なんですが、安くしてもらえないですか?」

査定中に怒鳴られることは多々ある。マウントを取ろうとするお客様は沢山いる。売り物にならないと知りながらジリ貧で見積もりを出しても、ブチギレられ、詐欺師みたいな目で見られることは山ほどある。散々キレて帰った後に、カビだらけの靴を携えて、やっぱり売るわと媚びた笑顔で近寄ってくる。

我々は天使か、我々は神の子か、我々は人類の奉仕者か、否、我々は奴隷である。給料も手取りで20万くらいしかない。時給に換算するといくらになるのか。リアル店舗のジレンマは要求すればするほど、会社ではなく、自店舗の負債になってしまう。ぼくが休めば、他の社員は休みが取れず、残業すれば経費が嵩む。固定残業制やけど。誰かがサボれば誰かが苦しむ。なんやねん、このシステム。

幸い、パートさんには恵まれているから、顔色を伺ったりする必要はないが、ぼくは彼らが化け物のように感じる時がある。その際に、他人を雇うあり得なさを痛感するのだ。まじでレヴィストロースの言う首長くらいのレベルじゃないと店舗は回せない。

酷いところなんて、社員は承認欲求まみれの主婦たちにいいように飼いならされ、見下されながら残業に追われたりしているらしい。人間に承認を求める奴はみんなクソだ。そんな奴らと働かないといけないなんてクソにもほどがある。クビにしようにも今は色々と面倒くさい時代だから、自分が辞める以外にはどうしようもないのだろう、びっくりするくらい社員が辞めていく。

我々は天使か、我々は神の子か、我々は聖なるかな、我々は。聖書のように朗読される社訓はあまりにも低俗で野卑で浅く、ぼくの心は怒りで満ち、休まることを知らない。言葉を読むこと、話すこと、ましてや言葉を朗読すること、覚えること。あと一年だけ我慢する。そのあとは、あなたたちのためにも闘う。