むかしのハロウィンは酷かった

「火あぶりにされたサンタクロース」

という本がある。レヴィ=ストロース中沢新一が著者である。四年前に読んだのであんまり覚えていないけど、ハロウィンとクリスマスについて考察した本なのだが、その本によれば昔のハロウィンはとんでもないものだった。

内容についてざっくり説明するとハロウィンで死者招来、クリスマスでプレゼント渡して死者にお引き取り願うというようなもの。この死者というのが、子どもにあたる。もうちょっと折り入って説明すると、レヴィ=ストロース俺変換によれば、死者を子どもにみたて、もてなし、来年の豊穣を祈願するといった宗教行事がハロウィン=クリスマスにあたる。うろ覚えだが、こんな感じだったはず。日本人なら染み深いよね、死者をもてなし豊穣を祈る行事。

ちなみにハロウィンはキリスト教の行事ではない。またクリスマスにプレゼントを与えるというのもキリスト教の行事ではない。彼らからすればこれは異教徒の文化である。接続詞の使い方に困るが、事実として、1951年フランスのある教会がサンタクロース人形を火あぶりにする。民衆の前で。それが発端となり大論争が起きたらしく、ついにレヴィ=ストロースが口を開く。

分析は、キリスト教以前の信仰とキリスト教キリスト教後の資本主義と資本主義以前からのキリスト教といった二項対立で話が展開されていく。

中沢新一が何書いてたか忘れたけど、レヴィ=ストロースはこんな感じで話を進めていったはず。

サンタさんが火あぶりにされたのも衝撃的な事実だったが、それよりも驚かされたのはハロウィンを機に爆発する子どもたちの悪童っぷりである。

子どもといっても青年も死者には含まれる。今でこそトリックオアトリートとか言うて可愛いものだけど、むかしは普通に女性を襲うわ、リンチするわで、とにかく悪行を尽くして街を荒廃させた。死傷者もいたような。それでも、大人たちは抵抗できなかった。なぜかと言えば、死者をもてなすことが社会の目的であるからだ。彼らにしてみれば、今、ここで思う存分暴れさせなければ、死者をもてなせなかったということになる。そうなれば、来年の豊穣は約束されない。

今では理解できない信心深さかもしれないが、彼らは自然界と人間界のバランスを保とうとする思考があった。そこを媒介するのが子供=死者である。実際にはイコールノットだ。イコールノットだから意味がある。死者を目で確認することなんてできない。だからこそ、死者を演じさせ、目で確認できるようにする。元来、子どもは現代における子どもとは別の意味を持つ。

掻い摘んで言えば、子どもとは小人であった。小人は大人=社会とは別の社会に属していると考えられ、小人=自然の領域に属する者として認識されていた。つまり、子どもは社会の成員ではなく、成人の儀式を終えてやっと大人に仲間入りする。どこの国のどこの部族でも成人式はある。なので、成人の儀を済ませていない者は子どもである。

気になる人はアリエスの『子どもの誕生』を参照してください。けっこう、ざっくり言ってます。小さい人は半分社会、半分自然です。立ち位置でいうと、カエルみたいなもん。一言にすれば両義的な存在だった。

話が脱線したので戻す。まあ、むかしのハロウィンは酷かったらしい。今や法外の行為がパブリックに堂々と行われることはないが、かつては法外の他者を迎え入れることが当たり前だった。子どもを孕んでも子どもは他者だから、よっぽどのことがない限り、生んだだろう。セックスもすごく軽かっただろうし、夜這いきたーみたいな感じだったのかもしれない。当時の思考と今の思考はそれだけ違う。

で、そろそろ、現行ハロウィンに対するパッシングでも言い出すのだろうと考えていらっしゃる人もいるかもしれないが、パッシングなんてできない。ゴミちゃんと捨てろよとかくらいだろう。

今のハロウィンをむかしのハロウィンはこうだったという論調でバッシングすることは不可能だし、とんでもなくナンセンスだ。今とむかし(どれだけ前かもしらない)は営む社会が異なる。つまり思考が違う。それに輸入文化だ

現在のハロウィンは良い意味でクラブ的である。仮装すれば、みんな友達。インスタ映え最高。場として人と人を繋げる場へと発展している。クラブはパブリックな発露の場ではないし。もちろん、友達欲しいやつらが集まるイベントだと思う人もいるだろう。そうかもしれない。でも、街を歩いていてコスプレしてる人がいるとおもしろいじゃないか。悪口もでるだろうが、恋もするかもしれない。

いいなあ、ぼくもしたことがある。ありふれたコスプレだったけど、おっぱいが凄かった。すらっと足が伸びていて、唇が真っ赤で。顔がとにかくめちゃくちゃ可愛かった。ただの恋である。こんなお姉さんと写真を撮るチャンスなんてないと思う。ナンパでも成功しないだろう人と写真が撮れるハロウィン。夢がある。ぼくはなぜか、パンツ一枚でスパンコールをクビに巻いていた。スベっても優しい。ああキキちゃんにキレられそう。