しこめの湖

眠い、いつまでも眠っていたい

明日も眠って明後日に起きて

外をふらついて、また眠りたい

ツユクサに褥(しとね

隣にしこめ 歌う歌はなく しこめは空をみあげて湖の一滴を目から落とした

そっと拭うのは叶わないから、夢で涙に溺れたものだ

歌える歌を探してやろう冬が来るまでに

なあ、しこめ

おまえが泣いて湖になってしまわないように

飯が食いたい

鯛が食べたい

朝はトーストがいい

採れたての麦芽を使ってくれ

敵わないことだらけ

叶わないことだらけ

ノイズがうるさいからヒンジを摘んで回して明けない夜を望む

星から垂れる蜜で近隣家屋を琥珀にしたい

未来の博物館に納めるために二つだけ残す

朝を逃れるために岩の蓋で顔を隠して身体だけをやきたい

叶わないことだらけ

ジーザスはその時、クライシスを迎える

死人は逆立して道を歩いている

私も逆立ちしてあの世を歩く

しこめ、わたしの愛おしいしこめ

おまえは胡座をかいて宙(そらを浮かんでいる

身に憶えは沢山ある

新しく生まれてきたわけではないから

何億年もかけて細胞は延命してきた

わたしは複数、わたしたちはわたしではない

わたしはたくさん、わたしたちになることができる

しこめの湖で唄える歌を探してやらないと、なあ、しこめ。わたしの愛おしいしこめ