動物たち

猫の小鉄。昔、猫が家におった。小鉄はまじで喧嘩がつよく、おれは飼ってたロットワイラーのジャムとよく喧嘩させようとした。でも、ジャムも小鉄も根は優しいので喧嘩はしなかった。小鉄は2階のベランダから何度も飛び降りて夜中に鳴いて戻ってくる。軒と軒の暗い隙間に目だけ光らせて鳴いている。母親が小鉄を呼んでいる。にゃあやにゃあ鳴いてんとはよ家帰っておいで。と言うが、小鉄はこっちに来ない。1時間くらいいつも交渉してやっと母親が抱いて戻ってくる。何度目かの家出で小鉄は家に帰ってこなくなったと思ったら半年後くらいに戻ってきた。それからまた家出して戻ってこなくなった。小鉄は喧嘩強いからまあ大丈夫やろと父親は言うていた。その頃、ジャムは家の近隣に住む紫色の髪のババアに頭を触られてキレた。ジャムがブチギレてババアの腕を噛んだらしい。普段は噛んだりしないが、頭が紫色のババアのことが嫌いらしかった。母親は髪の毛紫のやつにいきなり触られるの嫌やわな言うて憐れんでた、アタマ先に触る奴は失礼な奴や。ジャムはまあアホみたいに寝てた。しばらくしてジャムが死んだ。よっぽど悲しくて、ミニチュアピンシャのレックスの散歩へ行った。ピンシャのレックスは喧嘩が弱かったが、ジャムと散歩へ行った時だけ偉そうに胸を張って歩く。剽軽者で愛らしかった。そう言えば、近所にもう一匹、シェイクって名前のロットワイラーがいた。シェイクは山公園で鳩の群れを急襲し内一匹を食べてたことがある。おれは二回ほどシェイクと闘ったことがある。遊具をかけて闘った。普通に勝った。山公園では、2個上の先輩と殴り合いをした。髪の毛を引っ張られて顔面に二発膝を食らったけど、頑張って闘った。小4の俺的には勝ったと思ってたけど、みんなは負けたと言っていた。でも、おれは内心勝ったと思っていた。髪の毛引っ張ったら負けという反則勝ち、でも泣いたら負けというルールもあって初めから泣いていたからソウシは負けていたと言われた。で、次はめちゃくちゃ悪い一個上の先輩に顔面をビンタされて泣かされた。ウエーンと泣いたので裏でめちゃくちゃいじられていたらしい。その頃、ブリーフを履いてることがバレて「ブリブリーフッブリブリーフッ」と謎の歌を当時、権力を争っていたグループに歌われるようになった。嫌すぎて、ある時、学校を飛び出した。小学生やのに喫茶店へ行き、水を飲ませてもらって山公園で保護された。女の子に「豊川主人公みたいな走り方してたで」と言われてそいつをおもっきり蹴った。まだ女の方が力の強い歳ではあったが、めちゃくちゃ女の子が泣いた。後で謝ったら笑って許してくれた。最終的に豊川勢力は他方の集団を巻き込み巨大化したのであるが、巨大化した要因は組み替えのおかげである。空手最強と言われ裏の喧嘩番長だったジャホンは優しすぎてリクームに国語の授業の作文でおちょくられて泣いてしまった。リクームはもともとガリ勉だったが、ある時に吹っ切れてガチで頭がおかしくなってしまった。おちょくりながら喧嘩をするスタイル、リクームキックといいながらヒップアタックで相手を溝に落とし、リクームパンチと言いながら誰彼構わず戦う様は畏敬の念すら憶えた。リクームは常に笑いながら相手をどつき、周囲の笑いを誘いながら相手をバチバチにいわし、相手のプライドごとぶっ潰す。ゴッドは急に奇声をあげて坊主の子供の頭を撫でまわしたり、いきなり飛び蹴りをしたり、よくわからない奇行に走った。シマオカコウヘイは清風中学へ進学。そして、おれはサッカー選手を目指し、朝の四時にランニングと称し、無人販売機のエロ本を買いに行く。それぞれニューフェイズを迎え、来るべき中学生活へ向けてチンポの皮を剥いていった。

おれはたまに思い出す。チョルミの一発ギャグを。首に糸を巻いて「だれか、僕の飼い主になってくださ〜い」というギャグを。誰一人笑わず空気が白けて女にキモと言われ、逆上する伊達男チョルミ。20歳のチョルミはなんか肩が尖っているジャケットを着て尖った靴を履いていた。今生の別れを感じながらカラオケへ行く。ガクトを歌っている。なかなかのもんで全然ダメである。もう会うことはないかもしれない、そこからまた10年経った。