ドタマかちわったろかい

おれの親父は偶数を奇数で割ろうとした。愚かだと罵ってはならない。私は許さない、偶数を許さない。奇数しか認めない。奇数以外を認めることはできないだろう。なぜなら私のエンジェルナンバーは33であり、8月生まれだが5日生まれであることに誇りを持っている。カバラ数秘術を許さない。星座を許さない。いや、許せない。もともとかに座はギリシャ神話のヒュドラらしい。許さない。ゼウスを許さない。おれの親父は偶数で奇数を割ろうとした。私は偶数を許さない。次回予告!私は二進法しか信じない!

奇数で偶数が割り切れるか。そんな簡単な質問はナンセンスかもしれない。おれは実際に割り切った人物を知っている。おれの親父だ。俺の親父は偶数を憎んでいたよ。偶数を全体主義のように考えていたんだ。奇数のことを母さんとよび、自らのことを私生児と呼んでいた。親父の人生は本当に奇数まみれだったよ。おかしなことに!奇数以外認めなかった!おれは本当は偶数日に生まれるはずだったのに、親父はおれの頭を押さえつけて一日やりすごした。父親はもちろん逮捕されたよ。釈放の年度が奇数年じゃないと言い張り、一年待ってシャバに出てきた。一番初めに見かけた車、そのナンバーを一桁ずつ足した。なにわナンバー、そして奇数になった。親父はこのとき天命を受けたように感じ、この時以来偶数で奇数を割り始めたんだ。

1円わずか1gのアルミニウム。5円3.75gの真鍮。奇数だ!親父は空を見上げ嗤い始めた。親父は発見したのだ。どんなお金にも最後に1円ないし5円を付け足せば奇数になることを。親父の嗤いは止まらず、奇数メートル先の玉出西1丁目までその声は届いたと聞く。親父は台風14号素手で受け止めることを決意した。親父はつぶやいた。「ドタマかちわったろかい」親父は3足歩行で走り出し、犬のように遠吠えを上げながら人間であることをやめた。