60秒の慰め

60秒の慰め

たとえば目覚まし時計が

ちょっと気を使って 予定より少し早くだったり 少し遅くだったりアラームを鳴らしてくれれば 世界は衣摺れを起こし 少しずつ崩壊するだろう

時計にチーズを流し込んだダリの願いは時計を狂わせることだった 寸分違いなく時を刻む機械式時計をキチガイにすることだった

ダリの流したチーズは無駄じゃなかった ある者にはしっかりと届いた ある者には届かなかった 間欠的に遺伝したダリのチーズは時計をキチガイにする

だが、ぼくたちの音楽よ

そして、ぼくたちよ

なんの慰めになる

歌を聴いてなみだする

なんの慰めになる

ぼくらは捕らえられた魚のように

定置網のなかをぐるぐると回らされている

自由なる囚人を労働へ向かわせる

社会に血を与えるこの循環装置が何の慰めになる

疲れた人間を昨日のような明日へ送りかえす歌が何の慰めになる

歌も休日も何の慰めになる

キチンと時計は時を刻む

1分と1分の間に挟まれ 音楽を聴く

何の慰めになる自由なる囚人の牢屋たる社会の一味たる音楽がなんの慰めになる

夜 空が怒りに満ちる 空に怒りが走る 時計は望まれた労働者のごとく正確に働く。なあ、カフカ。時を正確に刻むのがおれの仕事だ。だから時計は時を正確に刻むのだ

1分と1分の間に挟まれた喜怒哀楽

この詩がなんの慰めになる

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

秒針と短針のあいだで生まれた

60秒後には切り刻まれた

勝手にしやがれ 60秒後に休憩は終わるんだ 60秒後に生は終わるんだ 60秒後には クソ音楽め 音楽にチーズを流し込んでやる ダリみたいに狂っちまえ

慰めがこの世界のポンプであるならば

音楽よ 軽やかに消えよ 人間共に地獄へ落ちよ もしも慰めが 未だ可能であるなら あの子をそっと包んでやってくれ 音楽よ 速やかに あの子を包んで土に還してやってくれ