Entries from 2019-09-01 to 1 month

私はなにを零してきただろうか。誰かが零したものを拾うような活動。それでも、零さんばかりの情報が脳裏を過ぎる。私も零しただろうか、私は零し続けているのだろうか。零したことにすら気づかず、名前すら知らないものたちを土足で踏み続ける私が人間様だ…

髪の毛と時間

国道に合流する小道でカーブミラーに写った自分の姿を見た。髪が随分と伸び散らかっていた。年の割に艶の残る毛束をいじる。この髪の毛には、おれの二ヶ月が詰まっている。おれが食ったもの、飲んだもの。浴びた光やタバコの煙、寝汗やシャワーも全部、おれ…

他人のエッセイ

エッセイはいい。易しい。アイススケートくらい平坦に滑れて急に穴が空いたりしないし。というか、穴が空くことも前提なので、そもそもの自由度が高くて適当で伸び伸びしていて好きだ。イッセイミヤケに惹かれるのも語感がエッセイに似てるからだろう。知ら…

『ガルルルルルルル』アイドリングする軽トラの向こう側で噴水の爽やかな音がする。水の音、固く閉めた蛇口から漏れる流石を聞いていると気が狂いそうになる。わたしはもっと固く蛇口を閉め上げる。音に敏感だ。この街は好きにはなれない。故郷ほど醜いもの…

砂の女

都会に住んでいる。東京に比べれば、とんと人も街も少ないが。都会で生きる術、都会と自分を結ぶ縁としてファッションを据えていた。それが昨日に断たれた。その契機となったのは、映画 砂の女だった。 人間は環境に見合った欲望を見出す。都会で出来ること…

嘘か本当かどちらでも差し支えない。映画の登場人物が死ぬば、お前は劇だと分かっている筈だが、泣いたり怒ったりするのだ。つまり彼が本当のことを言おうが、嘘をつこうが迫真めいてさえいれば、お前は感情の渦に飲まれる。ただお前は渦に飲まれればいい。…

聖なるかな

雨に降られて彼らは死んだ 蝉が転がる梅雨の頃に降ったのは さざれのような石だった 私たちに遺された跡は かなしかった 顔が雨に晒されるごとに わたしたちは冷たくなった 電車はうごかない 私たちの身体は 街へ放り投げられた 硬くなった 至る所でカーンカ…