無心で食らうひとたち

 

無心で牛丼をかっ食らう姿が目につく、住宅街の吉野家。この辺は単身赴任者ではなくファミリー層が多いから、おそらく「ほな、外で飯食うて帰るわ」とサラリーマンたちが仕事の終わり、腹を満たすためだけに立ち寄っている。身内がいようが挨拶を交わさないだろう、それが暗黙の了解だと思えるほどに丼から顔を離さない。私はその光景が好きで、私はまるで遊び人のような、仕事終わりでも、それとは見えないような姿をしているが、彼らと同じように一日を働き貫いているし、肩を並べる権利がある。そのことが誇らしく思えるような殺伐とした空間、疲れすぎて痴話喧嘩すら起こらないだろうことは容易に想像がつくような空間。このようか吹き溜まりはとても居心地が良く、私も利用する。私は人の話し声があまり好きではない。お前たちの情報はほんとうにどうでもよく、特に大学生同士の会話は関係が透けて見えるし、虚栄に溢れている。高校生まではくすんでも未だキラキラしていただろうに、犬の涎のように。