Entries from 2020-03-01 to 1 month

漉す人

カラタチの生垣に埋もれた、あなた。1960年代の日本、昭和。平和の象徴、ハト。ヒト科のメンテナンス期。鮮度管理。網でゴミを掬って、何度も濯ぐ。透けるまで。いつまでも浮かぶの、黒い点がと女が喋る。それを永遠に濾すのだ。灰汁と澱をならべて。残滓を…

皮膚

共感する奴は殺してやる 皆殺しだ ヒトの詩を見ていて気持ち悪いのは当たり前だ お前はいま、おれの言葉を見ている 共感する必要がない 私とお前の皮膚が隔てられている理由はそこにある それ以上もそれ以下もなく あり得るとすれば、お前がおれになること …

みどろ

2017-2018.4 女のむせびなく声が聞こえる。理由を訊くと、煙草のけむりのせいだ、とは女は答えた。ごめんね、と言って男は煙草をぐりぐりと灰皿に押しつけた。女は寝屋の角を一点見つめると、ゆっくりと言葉をほとぼらせた。きっと何も忘れていないの。きっ…

視線の辛さ

自己責任という名の元で、ファッションを嗤うという、行為が正当化されすぎていないか。性別や出身地は選べないが、服は選ぶことができる。マイノリティを嗤うことは許されないが、ファッションを嗤うことは許される。私は別にお前らに見せるためにファッシ…

美徳スーパー

美徳はスーパーで売っているのであなたはそれを買って飲めばいい。そうやってるうちに肉体が美徳になって、心も美徳になっているはず。馬鹿な奴はスーパーで美徳を買って飲んで食え。履いても美徳だ、食うても美徳だ、冷蔵庫に入れ忘れ、腐っても美徳だ。全…

涎鳥

ある時に居酒屋で友人と飯を食っていた。未だ若い頃だ。「あの女はヤレるで、エロいから」眉毛が鉤十字みたいな友人はそう言ってブラックバスみたいな口で、焼き鳥を頬張っている。串から一塊ずつ抜いてパクパクというか、ホクホクというか、唇を縦に開いて…

ありがとう、ホドロフスキー

エンドレスポエトリーを見た。ホドロフスキーの伝記的な映画なのだろう。夢のような構造をしている。街の人間には顔がなく、父親も母親も過剰に脚色されている。彼の実際の母親は映画のように愛に満ちた女性ではない。また映画に描かれた母親はホドロフスキ…