漉す人

カラタチの生垣に埋もれた、あなた。1960年代の日本、昭和。平和の象徴、ハト。ヒト科のメンテナンス期。鮮度管理。網でゴミを掬って、何度も濯ぐ。透けるまで。いつまでも浮かぶの、黒い点がと女が喋る。それを永遠に濾すのだ。灰汁と澱をならべて。残滓を見て、わたしたちを思い出して。わたしたちの垢は落とせない。落とせない。落ちない。私たちは代替の品物を自分に見立てて掃除をする、ピカピカにする。ピュアで純白なことなど一度となかった!汚れた羊水、血と糞としょんべんに塗れて生まれたわたしたちは初めから垢に塗れていた。あいつらが作った金網の揺りかごのなかで、ぶんぶん振られて、粗い目から色んなものが滑り落ちるのを見た。滑り落ちた奴らがこっちに手を振っているのを見た。錆びた血管で紫に鬱血した私たちの顔は。締められたり、解かれたりして、黄色になったり、赤色になったり、青色になったり、七色になった。倫理以前の媒介者のヒト科は人間に憧れる。売春を謳歌、紫の顔で赤色の顔を締め上げる。解いてやる。私たちの七色は血脈。他人の詩なんて気持ち悪いもんだろう。それだけが私たちなんだから。