幻の展覧会

展覧会を主催したことがある。1日だけだけど、給料のほとんどを使ったのだ。なぜ展覧会をしたのだろうか。動機はよくわからない。それに自分のためにしたわけじゃないのだ。友人のためにやった。ために?わからない。

何か報われなかったのを覚えてる。何か報われなかった。やるせなかった。なんでやねん、と思ってたのだ。しょうもなかった、色々としょうもなかった。すっごくやるせなかった。だれかに見てもらいたかった。友人に場としてそういう経験をしてほしかった。作品集じゃなくて、空間のなかで絵を見てほしかった、だれでもよかった。絵を描いたらだれかに見てほしいものだ。作ったらだれかに見てほしいのだ、やっぱり。放たないと絵は独りになってしまうから。それがなんか嫌だった。友人の姿が自分に重なってたような気がしなくもない。だれが読むとも知れないものを書き連ねる。ふとだれもこれを読んでないんだと思うと悲しくなる。そういった思いを重ねてたのだと思う。

ぼくは展覧会の準備の段階からイライラしていたと思う。プランなんてなかった。行って配置していい感じに仕上げればいいから。足りないなと思えば足せばいい。それとは異なる考えの人間がいて正直しんどかった。おまえらは勝手にしろ。と思ってた。勝手にやれ。いちいち否定的な態度を取られると腹が立つ。額なんか知るか。今までの絵を飾るのだから。テーマは20年間かなんかだろう。

展覧会、当日、開場するとともにつぼたろうと外で寝ていた。曇りでもあった。なんとなく、つぼたろう以外の人間は嫌いだった。つぼたろうのことは好きだった。つぼたろうとボボ、二人の展覧会だった。期日が近づいた頃、ボボが出品しないと言い出した。ほんとうは見られたいくせに言い訳すんなと言うと、ボボは怖いと言い出した。お母さんにもつぼたろうとモノが違うから恥かくでと言われていると言った。なにが恥なのかわからなかった。ぼくはブチギレた。おまえのクソババア連れてこいと言ったのではなかったか。笑う奴は全員殺してやるので、おまえのババアも殺したると言ったか言ってないか。とりあえず、ぼくは何度もブチギレた。今じゃこんなキレ方しない。ぼくはキレなくなった。

カフェじゃダメだったのだ。ギャラリーじゃないとダメだったのだ。何人もの人にカフェじゃあかんのかと言われた。カフェじゃダメだった。匂いも、コーヒーの味もそんなのなしで見てほしかった。最後まで主催者であるぼくは外でタバコを吸ったりしていた。となりで展覧会してたオバはんがここ禁煙やでと言ってきたが、無視してタバコばっかり吸ってた。時々、可愛い女の子に話しかけた。来てる奴らはしょうもない奴らばっかりだと思ってた。でも、まあよかった。100人くらい来てくれた。ありがたかった。でも、来てる奴の半分以上はおれの嫌いな人間だったのを覚えてる。今でも会えば殴ってしまいそうなくらい嫌いな奴らだ。その人間は主催者がぼくであることに気づかなかった。っていうかぼくは主催者だったのだろうか。つぼたろう以外はクソだった。久しぶりにつぼたろうと会ったとき、もう二度とあのメンバーで展覧会したくないわ!と言うとつぼたろうは笑っていた。

たしかに展覧会は面白かった。途中雨が降ったけど。でも、あの日のことを思い出すと頭の中で嫌いな奴らの顔が浮かぶ。あいつらの顔は俺の生に終始つきまとってくるだろう。あいつらはおれが闘っていかないといけない、紛れもない欺瞞だから。あれは一人じゃないのよ、群れなんだ。