テレビをつけると、構図が少し違うことに気がついた。どのチャンネルを回しても普段観ているテレビの構図、音声とは少し異なっている。でも、どこが違うのか、を明確に指摘することができない。些細な差異が徹底してテレビに染みついており、新しい秩序のなかで番組が構成されている。よくよく、自分の観ているチャンネルを見ると、72ch。ああ72chか。72ch?72chなんかあったか。検索エンジンで72chを調べてみる。ナナニーチャンネルと呼ばれているらしい。そう言えば、ナナニーって聞いたことがある。これがナナニーなのかと池田エライザの街ロケを観続けた。腹が減ったような気がして、外に出る。外は石畳で、自分はデニムのドレープの入った学ランを着ていた。デニムはシャンブレーのように軽やかでありながら、厚めのオンス。色はインディゴとシルバーの中間色で高貴な匂いがした。肩幅が合っていないが、似合ってないという訳ではなかった。いい服だと思った。通りすがら友人に会う。友人は自転車に乗って三角帽を被って学ランを着ていた。イメージしていた名前と違った名前を呼んだ。友人は振り返って、久しぶりと言って、「おまえ神戸の高校行ってんの?」「なんで?」「その服に神戸って書いてるで」確かに神戸と書いてあった。私は友人におまえは今なにしてんの?と尋ねると、此花高校に通っていると答えたので、私はまたおかしいなあと思った。歳を尋ねると、18歳だと友人は言う。「おまえも今から高校?」「いや、おれは社会人」

あいつとおれは同級生で同じ歳だったに違いないのに、どうしてあいつは18歳なんだ。もしかしてあいつの時間軸がズレたのか、それとも俺の時間軸がズレたのか。それよりもこの世界は夢なのか、現実なのか確かめる必要がある。だからコンビニへ行って弁当のコーナーを見に行こう。夢の世界であれば、きっとラインナップが違うはずだ。

私はコンビニまで駆けた。インテリアオフィスさながらのディスプレイ、床は黒く、壁も黒い。シーリングライトは、オレンジ色で花弁の小さな花の群生のように天井に散っている。楕円形のカウンターの脇に見繕われたコーナーに弁当があった。鮭にいくらの乗った海鮮親子弁当を見て、ああこれは夢の世界だと確信した。