回想

身体のベタつきを感じた。汗が乾いた後の少し不快さ。施術中、何度か落ちた。マッサージ師の友人がバスタオルをかけ直すたんびに、汗の乾いた痕、つまるところ私の肌、身体の輪郭を感じつつ、また眠りに落ちる。朦朧としながら人生が一周回ったような気がしていた。もうすぐ29歳になる。自分の生は残り半分くらいな気がする。晩年に差し掛かりつつあるんじゃないかと急に思い立つ。石の段と段の隙間からツユクサが伸びている。右手には造花の、小さなヒマワリが花壇に幾本も刺さっていて、目の前で、階段の降りた先で学生がファッションショーの練習を、そのすぐ先に街灯でキラキラうねっている水面が、川が流れている。その橋の上を、向こう岸からホットパンツの十代が歩いている。夏だ。涼しいのは、川縁に座ってるからか、気温が低いか。昼はあんなに暑かったのに、夜は澄ました顔をしてやがる外気。

先立って働くな。パウルツェランみっくちゅじゅーちゅを飲みながらタバコを数本階段に埋める。モーツァルトがクラシックの分岐点だから、ここ十年、モーツァルトしか聴いてないのだ。と60歳を回った音楽家の方が話していたのを思い出した。