ゲイのトーレス

トーレスから連絡が来た時、わたしはタカさんといた。トーレスは友人の友人でSNSを伝ってDMをくれた。彼が色情狂いだと聞いていたので、楽しげにメッセージをしていると突如ちんこを見せてきた。わたしはタカさんにiPhone4sを託した。

タカさんは英語が堪能で、留学生でも成績が優秀なわけでもないのにネイティブばりのスラングを操った。日本人というよりも日系アメリカ人。ちんこが馬鹿ほどデカかった。外国人が集まるチャーチでゴスペルを習っていた。髪の毛もお洒落で、イケメンなのに高校時代のタカさんは爆烈に服がダサかった。コミュ力も高い、イケメン、髪の毛もお洒落、それでいて童貞だった。同級生はみな首を傾げていた。後に判明したことだが、タカさんは例のチャーチでクリスチャンの洗礼の儀式を受けていて、いつの間にか純潔を誓っていたのである。その事実をフェイスブック越しに知った当時のタカさんの彼女、富士山の気持ちを考えると悲惨である。なにしろタカさんをチャーチに誘ったのは紛れもなく彼女だった。

気がつけば、彼氏がクリスチャンになっていた。デートの後は握手で終わる。初めの方は奥手なのだろうと考えたらしいが、いつまで経っても握手から先がない。度が過ぎるぜと思っていた矢先に彼氏が水を張ったバスタブに身体を浸され、皆から祝福を受けている写真を見たときの衝撃は計り知れなかっただろう。

タカさんは高校を卒業すると音沙汰無くいなくなった。ああタカさんに会いたいなあなんて思いながら、アメ村をぶらついているとタカさんと遭遇した。恐らく2年ぶりの再会だった。訊けば、タカさんは何故かドイツにいたらしく、ドイツ語を話せるようになったとのこと。タカさんはキチガイでもないのに全く予測できない点Pだ。

そういった次第で、わたしはタカさんにトーレスのちんこを見せた。一時間くらいタカさんはトーレスと連絡を取り合っていた。トーレスは爆烈に興奮していて、タカさんは飽きていた。わたしも何ていうかトーレスに申し訳ないような気持ちになっていた。そんな奴ほっといたらええやん、みんなにこうやってちんこ送りつけてるような変態や。まあなるほどとなったが、申し訳なさは拭えなかった。そのあと、わたしはトーレスに、あれは友達が送ったメッセージやねん。おれはゲイじゃないと送ったが、トーレスの怒りは止まなかった。

後日、トーレスの友人から「お前のことサイコ野郎言うてたぞ」と連絡が来た。トーレスは友人の恩人でもあったから、もっかいちゃんと謝ろうかと思い立ちトーレスに謝罪のメールを送った。

トーレスからビデオチャットをしようと返信がきた。ぼくは外国人とテレビチャットをするのが嫌いである。メールでは流暢な雰囲気で英語をするから向こうは英語を喋れるものだと思い込んでいる。実際は特に話せない。でも、まあ今回は断るというのもおかしな気がしたので承諾した。

結果から言うと、トーレスはカメラに射精した。わたしは負い目を感じていたので断ることもなく、笑わざるを得ない状況でフーフー言いながらペニスを扱き続ける60代の白人を眺めていた。「もっとなじってくれ」と言われたのでStupid と言った。トーレスが果てた。「これでおあいこやな」と捨て台詞を吐いたトーレスの青い目は白みがかっていた。

ことの経緯をタカさんに話した。「何がおもろいねん。ふつうにキモいやん笑」と言われて、わたしも「何がおもろいねん」と心のなかで呟いた。せめて私は笑うことを止めて沈黙のまま射精を受けるべきだった。