待っている

待っている。それは来ないかも知れず、生涯出会い損ね続ける者もいる。ただ何かしらの到来を待つ。そのために鋭く在り続ける。その者に助け舟を出さずに、馬事雑言を被さないように。染められながら、染まってはいけない場所があることを知っている。『ゴドーを待ちながら』言わずと知れたベケットの戯曲だ。彼らが一体何を待っているのか、神でもいいし、未来でもいいし、なんだっていい。彼らは待っている。言葉がギリギリ機能するところで。だれか、他者、メシア的なものか、そんなものか。一匹の仔犬だって恋人だって、映画だって、漫画だって、小説だって、何が何だか知らないが待っている。求め続けることはラディカルだ。待ち続けることは死を待っているのか、迎えることは扉を開くことか。迎えに行くのは車でか。地面がひび割れても耐えうる身体は。