ヨダカの星

原付で中華街の裏路地を転がしていた。パープル、イエロー、どぎついネオンも水溜りに映れば哀愁の塊りだ。おれはそれを真っ二つに車輪で切ってキラキラ光る水を路地裏いっぱいに広げて、花でも咲けばいいのだが!とアスファルトを華麗に突き破って萌える、真っ赤な花の群れを思いながら一斗缶を蹴飛ばした。夜の女たちの群れが、ヒール姿にスパンコールのワンピースを着てるのでそれだと分かるのだが、男を漁って手に握り締めれるだけ稼いだ金を、是非ひったくてやろうと躍起になって手を伸ばす。キラキラ光ってるノースリーブからすらっと生えた褐色の指に光る白銀のフクロウを見て、おれは手を引っ込めた。女たちはキラキラ光っている。疲れを巾着のようにぶら下げてキラキラ光ってやがる。おれの作業着はさっき殺した豚の血でキラキラ光っている。爽快だ。おれたちはキラキラ光ってる。この街はキラキラ光ってやがる。おれの泪は血の味がする。それでもおれはキラキラ光ってる。おれは血を流しながらキラキラ光ってやがる。女の目を見ると、女は血を流していた。おれたちは血を流しながらキラキラ光ってやがる。ああおれたちはキラキラ光ってやがる。星みたいじゃなく、おれたちは七色に光ってやがる。この景色を見てやりたい。おれたちは星よりも火よりもこの上なく光ってやがる。それがあまりにも明らかでおれたちは一層血の涙を流して、尽きない赤色のなかでキラキラ光った。この景色を見てやりたい。そうして、おれたちはまた夜に溶けて街になって朝が来るまでキラキラ光って、日が昇る頃には牛のように眠るのだ。その頃には懐かしいネオンは、ネオンを巡る配線はバンパイアのように光にショートして蘇りを待ってまたキラキラ光る。