しこめの湖

眠い、いつまでも眠っていたい 明日も眠って明後日に起きて 外をふらついて、また眠りたい ツユクサに褥(しとね 隣にしこめ 歌う歌はなく しこめは空をみあげて湖の一滴を目から落とした そっと拭うのは叶わないから、夢で涙に溺れたものだ 歌える歌を探して…

一筋縄

おおきに、おおきにでございます。ほんまにおおきに、おおきにでございます。今日もまあ朝からはよ起きて、いつもよりちょっとお早うさんでございました。煙草が切れてたもんでコンビニ走って、道歩きもって煙草吸うて、いつもの自撮りする自販機見たらトラ…

アンビエント

水であるわたしたちは、年中染まりやすく汚れやすく、わたしたちはいつも何色かであったためしがなかった わたしたちは水であるから、空気をよく含むのだった わたしたちに溶けるだろう馴染みやすいシャブ おれやってたもん、シャブ 初めは吸うんや、おれは…

泳ぐ

人の寿命が七万歳のときに初代仏陀は生まれたらしい。棟方志功の版画を見ていた。それよりも壁4面に展示されていた4枚の絵画、シャガール。内、1枚がとても気に入って眺めいった。絵は背丈の高いイネ科の植物が金色に輝く畑、魚が頭を覗かせてその隣にカマ。…

兄ちゃん

私は親のおかげで無修正の洋モノを沢山持っていたので友達に回していた。無修正のビデオを持ってるってだけでヤバいのに洋モノだったので尚更やばかった。学年にはもう一人、無修正を持っている同級生がいた。兄ちゃんと呼ばれていた。小学生なのに漢字の知…

青春と夜美女

隣の小学校出身の悪い子どもたちは、私たちの小学校よりマセていた。マセているガキはだいたい悪ガキだった。ちん毛が生えたとか、生えてないとか、脇毛の方が早かった、とか遅かったとか、性の入り口は希望に満ちつつ、恥じらいがあり、裏ビデオを回したり…

妖のたぐい

おれには妖が足りてなかったんじゃないか。神秘的でミステリアスでただの謎ではなくそのまんま妖が。紛れもなくそれが足りず、妖がない俺様は俺様でないのではないか。俺様ほど妖であった試しはないんじゃないか。夜道を歩きながら坂本慎太郎、ゆら帝に耳を…

新しい雨

新しい雨 頼むから雨は止むな 陸上の哺乳類すべてを戸惑わせろ もっと迷惑であれ 槍を降らせろ 石を降らせろ 上からトマトを叩きつけて種を撒け 音速で投げろ 民家の瓦を突き抜けて 地面に減り込むような、そんな火の玉 なんなら、火の玉を降らせて 街を燃や…

大袈裟な先祖

大袈裟な先祖 雨が一頻り降って濡れた そのうえを仕事帰りにあるいて そう、藻屑ガニがパクパクしてる用水路を通って 今朝白濁した水流にあいつはぶっ飛ばされたかもしれない この前、難波でサワガニを見た ここは岸辺 豊川の川が河だったら苗字を替えてたか…

factio

自分の秩序を壊し続けるのがファッションだ。ファッションの語源、factio(ラテン語)は成すこと、創造である。となれば、同じようなスタイリングに縛られ続けるのはファッションではないのである。そのスタイリングは既に成されたのだから、同じことをやり続…

どこかの馬の骨

いちいち説明してあげないといけない。我々が何者か、我々がどういう神話を持って、そうゆう服を選んだのか。すべて説明してあげないといけない。

秋の装い

秋になったのか、この年になって身に染みてわかったことがある。秋の初めは一番アツい。少し涼しくなってきて、もう秋か〜となるのは中秋頃なのだろう。私は都合のいい秋しか見つめてこなかったのだ。秋の始まりは暑い、夏とのグラデーションを結んでるのだ…

狂った体液

稼いだ金を服に注ぎ込むことで呼吸をし、でもその呼吸は喘ぐように浅い気体の交換。身体の毒素は少しずつ、溜まっていき鬱血する。力は緩まない、力む赤い顔で。ぶくぶくと肥える欲望はただ末広がりに、私を手招きし、満足の代わりにお手軽な快楽を掌に置く…

第五回棚田全段万里の長城流しそうめん

ヒマラヤほどの棚田に、ミサイルほどの竹を組んだのだから見渡せる訳がない。例年に漏れず、そうめん台はエロティックだった。畦なのか畑なのか判然としない茫々と茂る緑から節取りされた竹の断片が現れたかと思えば、蛇行してまた茂みに消える。穂波ちゃん…

声をあげる

声を上げる、声 声を散らす、声 叫びと共に生まれた 矛盾の織物に生み落とされ 優しや怒りや悲しみに包まれて 汚れた世界を繋いだ、そして声がまた生まれた 私が泣くのは矛盾に胸が詰まるからだ 私が怒るのは矛盾で胸が痛むからだ 私が笑うのは矛盾を忘れる…

回想

身体のベタつきを感じた。汗が乾いた後の少し不快さ。施術中、何度か落ちた。マッサージ師の友人がバスタオルをかけ直すたんびに、汗の乾いた痕、つまるところ私の肌、身体の輪郭を感じつつ、また眠りに落ちる。朦朧としながら人生が一周回ったような気がし…

Live forever

温風至。熊本へ赴いて少し心待ちが変わった気がする。私は諦めていた。本当は歩きたかったのだと思った。歩くのも汗をかくのも、人に見られるのも、人を見るのも、街を見るのも嫌だった。私には四季がなく、四季を手放した。街がそうしたように、私もそうし…

村人A

むかしの話になるけど、富山の立山で働いていたことがあった。標高2000メートルの平原のホテル勤めで、休みの日は市街へ下山する。一泊して始発で山に戻り、ランチタイムに出勤。バスに乗ってロープウェイに乗って、ちんちん電車に乗って3時間くらいかな?市…

散歩

私たちの髪の毛は風にそよぐことができる 私たちの髪の毛は水面に揺らぐことができる 私たちのこの手は捏ねることができる 私たちのこの手は何者をも掴むことができる 離すことができる、わたしたちのこの手は 私たちの身体は川面の蛇のように美しいから 私…

着て帰る

主体は結ぶものなのだろう。バラバラに離切している物事を結んで、歴史を作っていくだけの私。時代も背景もてんで異なるものを編んでいくだけの私。時計じかけのオレンジのワンシーンで主人公のアレックスが、ヴェートーベンを聴きながら、経験したこともな…

ミウッチャプラダとマリネッティ

スピードが好きだ。速いものが好きだ。絵も詩も歌も。マリネッティのスピードが好きだ。未来派のスピードが好きだ。私はただのスピード狂いなのかもしれない。徒歩のときの思考と、自転車に乗っているときの思考は異なる。景色も異なる。自転車に乗ってると…

100年ぶりの世紀末

夜の1時、腹が減ったので表へ出た。ぬるい風が吹いていた。冷たさ、熱気、ぬるさに織られた肌触りに懐かしさを感じた。風に吹かれながら、いつもより少し目線を上げて一軒家の三階、電線に目配せする。電線は規則正しい電柱に連なり、たゆみ、ずっと奥の方へ…

毛皮の生えた無機物

鉄アレイに毛皮なんて生える訳がない。ヒト科は苔を毛皮と認めないだろう。錆も然り。むかし、私は緑の男という人物について長い文章を書いたことがある。彼は下顎より上がない塑像の顔について悩み果てるうちに全身が苔むしてしまった。彼は自分の作ったも…

ビューティフルだろ

蜂の音で蜜はより甘くなる より蜜を甘くするために 我々人類は音速で羽ばたく 我々の手は花をファックする媒介者 ビューティフルだろ、人間は 人間はビューティフルだろ おれたちは花に口付けるたびに子虫を交換し合う おれの花びらとお前の花びらを合わせて…

獺祭

獺祭、カワウソが獲った魚を並べる様。食わないらしい。食わずに並べる。その様がお供えをしているように見えたことから、カワウソが祭りをやっているとなって、獺祭という言葉になったようだ。そこから意味が転用されて、詩など言葉を綴る際に、文献を広げ…

獺祭

獺祭、カワウソが獲った魚を並べる様。食わないらしい。食わずに並べる。その様がお供えをしているように見えたことから、カワウソが祭りをやっているとなって、獺祭という言葉になったようだ。そこから意味が転用されて、詩など言葉を綴る際に、文献を広げ…

虫唾が走るの

野を超え 山越え 海超え 南極あたりで右回り きみの声ー 虫唾が走るの〜 虫唾が走るわ〜 もう聞こえない 声すらない 嗄れてるのか ざわついているの 君の声〜 虫唾が走るわ〜 虫唾が走るの〜 聞こえないふりしても それはだれの声 風に巻かれて 木々に引っか…

テレビをつけると、構図が少し違うことに気がついた。どのチャンネルを回しても普段観ているテレビの構図、音声とは少し異なっている。でも、どこが違うのか、を明確に指摘することができない。些細な差異が徹底してテレビに染みついており、新しい秩序のな…

ポストコロナ

コロナの収束とともに浮気が流行る。カップルや夫婦で暮らしてる人は一生分、抱いたり、抱かれたりしただろうから、若い人たちなんてチョメりあってレスってるに違いない。だからポストコロナのあとは、イージーナンパホテル時代に突入するな。だから、ラブ…

川床

河へ飛び込むかどうか、あそこに通じている道は河だ。汚くもさして綺麗でもない。あの河、それの向こう側でもない、ただ河へ飛び込んで川面に浮かぶ、沈みかけている、徐々に腐りつつある、足を踏めば、バラバラと流される床へ行かなければいけない。そこか…